全日本トラック協会は11月14日、第131回「トラック運送業界の景況感」を公表しました。令和7年7月期~9月期は、一般貨物の輸送数量減少、燃料価格の高止まりや物価高による運送原価の上昇分を十分転嫁できず、営業利益・経常利益は悪化傾向にあることから、景況感は前回のマイナス20.0からマイナス24.1へ4.1ポイント悪化しました。
1.いま業界で何が起きているのか
業況DIは▲24.1、来期見通しは▲29.4
- 業界全体の業況判断DIは ▲24.1(前回▲20.0)と、悪化が続いています。
- 来期見通しは ▲29.4 まで落ち込む予測で、先行きへの不安感が強い状況です。
- 背景には
- 一般貨物の輸送数量減少
- 燃料・人件費・物価上昇
- そのコスト増を十分に運賃へ転嫁できていないこと
が挙げられています(資料1~2ページ)。
一般貨物は「量・価格・利益」すべて悪化
一般貨物では、指数はいずれもマイナス方向に振れています(資料4~5ページ)。
- 輸送数量:▲14.9 → 来期見通し ▲19.2
- 営業収入(売上高):▲11.3 → 来期見通し ▲13.7
- 営業利益:▲37.9 → 来期見通し ▲39.4
- 運賃・料金水準:+15.9(前回+21.0)と、上昇ペースが鈍化
つまり
「荷物の量が減っているのに、運賃アップも頭打ち。
その結果、売上・利益がじわじわ削られている」
という構図です。
特積貨物だけは明るい材料
一方、宅配などを含む「特積貨物」は様子が違います(資料6ページ)。
- 輸送数量:12.8 → 見通し 15.2
- 営業収入:10.5 → 見通し 12.5
- 営業利益:▲2.4 → 見通し 8.2(黒字圏へ)
運賃水準はやや鈍化しているものの、数量・売上・利益ともに改善傾向です。
「宅配や共同幹線など特積型ビジネスにはまだ伸びしろがある」と読めます。
ドライバー不足と輸送効率の悪化
- 実働率DI:▲5.3 → 見通し ▲6.3
- 実車率DI:▲7.1 → 見通し ▲8.1
と、トラックの稼働効率が悪化しています(資料3ページ)。
一方で、
- ドライバー雇用(不足感)DI:95.7 → 見通し 97.6
- 採用動向DI:▲32.0 → 見通し ▲33.1
となっており、
「人は足りないのに、トラックは効率よく回せていない」
という二重苦が浮き彫りになっています。
規模別では大手が踏ん張り、中小が厳しい
- 大規模(車両101台以上):業況DI 12.6(まだプラス)
- 中規模(21~100台):▲24.9
- 小規模(20台以下):▲29.3
と、規模が小さいほど業況感が厳しい結果です(資料7ページ)。
今後の見通しでも、中小・小規模ほど悪化幅が大きい傾向にあります。
2.これからの経営戦略5つのポイント
上の数字を「嘆き」で終わらせず、経営の打ち手に変えることが大切です。
ここでは、組合員の皆さまが検討しやすいよう、5つの視点に整理しました。
① 「何を運ぶか」を見直す(荷主・品目ポートフォリオ)
- 一般貨物全体が厳しい中でも、
- 特積貨物
- 一部の機械関連貨物
など、比較的堅調な分野も見られます(資料6~7ページ)。
対応のヒント
- 荷主・品目別に「採算」「伸びしろ」を棚卸しする
- 収益性の低い荷主・案件を惰性で続けていないか確認
- 地場輸送のみ・単発仕事が多い場合は、
- 特積系ネットワークへの参加
- 中長距離の幹線輸送の受託
などでポートフォリオを分散させる
利益を生まない仕事を減らし、「薄利多忙」から「選択と集中」へ踏み出すタイミングです。
② 「いくらで運ぶか」を見直す(価格転嫁と交渉設計)
調査では、運送原価の上昇分が十分に価格転嫁できていないことが、
経常損益悪化の大きな要因とされています(資料4ページ)。
対応のヒント
- 燃料費・人件費・保険料などの**原価構造を“見える化”**する
- 取引先ごとに「いつ、どのくらいの運賃改定をお願いしたか」を整理
- 交渉の際は
- 数年前からのコスト推移
- 業界全体の景況感(この資料)
を根拠として示す
- 長年の付き合いの荷主ほど、「ギリギリまで頑張ってきたが限界です」と丁寧に説明する
今後、取適法・振興法や価格転嫁のガイドラインも追い風になります。
「お願いベース」から一歩進め、根拠ある交渉の型を社内で共有しましょう。
③ 生産性向上への投資を“攻め”の発想で
実働率・実車率が悪化している一方で、
国はテールゲートリフターやITシステム導入への補助金など、
生産性向上投資を後押しする制度を用意しています。
対応のヒント
- 荷役時間短縮・負担軽減
- テールゲートリフター
- トラック搭載クレーン
- 2段積みデッキ など
- 配車・運行・労務管理の効率化
- 配車計画システム
- 運行・労務管理システム
- 車両動態管理 など
- 原価管理や契約書電子化による「ムダな仕事」の削減
「忙しいからシステム導入どころではない」ではなく、
忙しいからこそ自動化・標準化に踏み出す視点が重要です。
④ 人材戦略:採用と定着を「セット」で考える
採用DIが▲32.0、雇用不足感が95.7という数字は、
「採っても採っても足りない」現場の感覚そのものです(資料3ページ)。
対応のヒント
- 募集条件だけでなく
- 若手・未経験者を育てるための
- 同乗指導
- 資格取得支援(中型・大型・けん引・フォークなど)
- 女性・シニアも働きやすい職場づくり
- 日帰り運行の拡大
- 軽作業・事務との組み合わせ など
「良い人が来ない」の前に、
自社が“選ばれる職場”になっているかを点検することが欠かせません。
⑤ 規模の壁を越える:連携・共同化・M&A
調査では、小規模事業者ほど業況感が悪く、
先行きも厳しく見ていることがわかります(資料7ページ)。
対応のヒント
- 共同配車・共同幹線・共同集配など、組合や仲間同士での共同化を進める
- 倉庫・整備工場・事務機能をグループでシェアし、固定費を抑える
- 後継者不在の場合は、
- 早めに事業承継・M&Aの情報収集を始める
- 組合や専門家に相談し、「たたむ」のではなく「つなぐ」選択肢を探る
「単独では厳しいが、連携すればまだ戦える」
——そんな事業者は少なくないはずです。
3.おわりに:数字を「危機感」だけで終わらせない
今回の景況感調査は、
- 一般貨物の落ち込み
- 価格転嫁の遅れ
- 人手不足と効率悪化
という、トラック運送業界の厳しい現実をはっきり示しています。
しかし同時に、
- 特積貨物や一部分野には伸びしろがあること
- 生産性向上や人材育成に対する国の支援策が拡充されていること
も読み取れます。
組合としても、
- 補助金・支援制度の情報提供
- 経営相談や専門家の紹介
- 共同事業の企画
などを通じて、皆さまの「攻めの一手」を後押ししていきます。
ぜひ今回の資料を、自社の数字と照らし合わせながら
「何を変えるか」
を経営会議や幹部ミーティングで話し合うきっかけとして、ご活用ください。