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厚生労働省から「令和7年版 過労死等防止対策白書」が公表されました。本白書は、「過労死等防止対策推進法」に基づき、過労死等の現状と政府の対策を国会に報告する法定白書であり、特に「自動車運転従事者」は調査研究の重点対象業種の一つとして位置づけられています 。

運送業界にとって、時間外労働の上限規制適用(2024年4月)を乗り越え、持続可能な経営を実現するためには、この白書から読み取れるデータと国の方針を深く理解し、経営戦略に反映させることが不可欠です。


1.運送業界の「過労死」リスクは依然として高い水準

白書が示すデータから、運送会社経営者が認識すべき業界の現状は以下の通りです。

(1) 脳・心臓疾患事案(過労死)のリスク

脳・心臓疾患事案(過労死)の労災支給決定件数は、自動車運転従事者において、直近の3年間(令和2年度から令和4年度)は減少傾向にありましたが、依然として他業種に比べ件数が多い状況にあります 。これは、長時間労働や厳しい労働環境が、従業員の生命に関わる健康リスクに直結していることを示しています。

(2) 精神障害事案(メンタルヘルス)の急増

さらに深刻なのは、精神障害に係る労災支給決定件数です。白書によると、自動車運転従事者の精神障害事案は大幅に増加しています 3。

全業種で見ても、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスがあるとする労働者の割合は68.3%に上っており 、メンタルヘルス対策の強化は喫緊の課題です。


2.経営者が取るべき5つの重点対策

白書では、過労死等を防止するための対策の実施状況が示されており、特に運送会社経営者が注力すべき対策は以下の5点です。

1. 時間外労働上限規制の「遵守徹底」

令和6年4月から運送業にも時間外労働の上限規制が適用されました。労働基準監督署は、この規制の遵守徹底を図るため、長時間労働が行われている事業場や、過労死等を発生させた事業場に対し、監督指導を徹底して実施します 。経営トップは、全社的な労働時間管理体制の構築に責任を持つ必要があります。

2. 勤務間インターバル制度の導入・促進

勤務間インターバル制度(終業から次の始業まで一定時間以上の休息時間を設ける制度)は、ドライバーの疲労回復に極めて有効です。しかし、制度の導入企業割合は5.7%と低水準に留まっています 。目標とされる15%(大綱目標)達成に向けて 、積極的に導入・活用を進めるべきです。

3. 労働時間の適正把握と健康管理

長時間労働を行った労働者に対しては、医師による面接指導を確実に実施しなければなりません 。また、そもそも労働時間を適正に把握するためのガイドラインに基づいた労働時間管理の指導も強化されています 。デジタルツール等を活用し、正確な労働時間と疲労蓄積の状況を把握することが、安全配慮義務の履行に繋がります。

4. メンタルヘルス対策とハラスメント防止

精神障害事案の増加を受け、労災認定が行われた事業場に対しては、メンタルヘルス対策の指導が実施されます 。

特に、精神障害の決定件数では「対人関係」「パワーハラスメント」といった職場環境に関する出来事が大きく増加しています 。ハラスメント防止措置を講じていない事業所への指導も強化されており 、職場環境の改善は急務です。

5. 商慣行を含めた勤務環境の改善

トラック運送業について、業所管官庁と業界団体が中心となり、商慣行を含めた勤務環境改善のための取り組みが推進されています 。これは、荷主・元請けとの関係における「しわ寄せ」の解消と、適正な運賃・料金収受に向けた交渉を、経営者が主体的に行うべきだという国からのメッセージでもあります。


3.相談窓口を活用し、リスクを回避する

「過労死等防止対策白書」では、企業の労働条件や健康管理に関する相談窓口の整備状況も示されています。経営者として対応に迷った場合や、従業員から相談があった際に活用できるよう、以下の窓口を把握しておきましょう。

窓口名概要
労働条件相談ほっとライン違法な時間外労働など、労働条件に関する相談に平日夜間・土日祝日も対応する無料電話相談窓口 。
働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」メンタルヘルス不調や過重労働による健康障害等に関し、SNS、メール、電話による相談に対応 。
産業保健総合支援センター産業医等の産業保健スタッフや、労働衛生・人事労務関係者向けの専門的な研修を実施 。

運送業の持続可能性は、健康と安全を最優先した働き方改革の実現にかかっています。本白書の内容を経営の羅針盤とし、全社を挙げて対策を講じてください。

※(参考)令和6年度過労死防止対策白書