全日本トラック協会(全ト協)は『事業用貨物自動車の交通事故の発生状況(令和7年9月)』を発行しました。100ページに及ぶ報告書ですので内容を要約しましたのでぜひご覧いただき、安全教育にお役立てください。
まず、この報告書は、単なる過去の統計ではありません。これは、「2024年問題」以降の運送事業者が生き残るために、今すぐ変えるべき具体的な課題を浮き彫りにした「経営の羅針盤」です。
令和6年5月に事業用トラックによる甚大な被害を伴う重大事故が相次いだことで、私たち物流業界は今、「社会的信頼性を取り戻すべき重大局面にあります」。
この資料から、組合員の皆様の安全管理と経営判断に直結する3つの最重要ポイントを抽出しました。
長年の努力により、事業用トラックの死傷事故件数は順調に減少傾向にあります(R6年は8,619件と、H27年から46.7%減少)。しかし、その内訳を見ると、恐るべき事実が浮かび上がります。
令和6年の死傷事故のうち、追突事故(進行中と駐・停車中)の合計は3,870件に上り、全体の44.9%を占めました 。
追突事故は、ドライバーの「漫然運転」や「安全不確認」といった人的要因が絡むケースがほとんどです。全ト協が提言する「交通事故を絶対に起こさないという意識改革」は、まずこの「追突」を撲滅することに集中すべきです。この最大のリスクを潰せば、事故件数は一気に半減に近づきます。
事故件数の背後には、業界の存続を左右する重大な法改正が進行しています。
事故や飲酒事案、そして法令違反の根絶は、もはや「努力目標」ではなく、「事業継続の前提条件」です 。事故統計から学び、対策を打つことが、悪しき商慣行に頼らない「真に安全で安心して働ける物流業界」へと変わるための、唯一の道筋です 。
人的エラーだけでなく、車両側の問題も見過ごせません。
車輪脱落や荷くずれは、一瞬で人命と会社の信用を奪い去る重大な事故要因です。特に「荷くずれ」は、ドライバーの積載方法、管理者による指導、そして荷主との連携体制に問題がある証拠です。運行前の点呼時、これらの「基本的な確認事項」を徹底するだけで、事故のリスクは確実に下げられます。
この資料を活用し、あなたの会社の安全体制を今すぐ見直してください。(全報告書はこちら)