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去る10月15日、全日本トラック協会は新潟市の朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンターにて「第30回全国トラック運送事業者大会」を開催し、約1300名の運送事業者が集結しました。

この大会は、物流業界が直面する大きな変革期において、特に運送会社の皆様にとって、今後の事業戦略を左右する重要な情報と決意が示された場となりました。ここでは、特に組合員の皆様に大会のポイントを解説します。


最重要テーマ:トラック適正化二法への期待と実現への決意

大会のシンポジウムでは、「トラック適正化二法施行に向けての期待」が中心テーマとして議論されました。これは、2024年(令和6年)問題以降の業界の「景色を一変させる」可能性を秘めた法制度であり、運送会社が収益を確保し、持続可能な経営を行うための生命線とも言えます。

運送会社が注視すべき適正化二法のポイント

シンポジウムや大会決議で強く打ち出された、運送事業者が今後取り組むべき、あるいは期待すべき点は以下の通りです。

  1. 適正原価を下回る運賃・料金の制限
    • この制度が実現すれば、過度な安値競争から脱却し、適正な運賃収受が強力に後押しされます。
    • ただし、単に法律に頼るだけでなく、「適正原価」を算出し、荷主を説得できるだけの経営哲学と交渉力が不可欠であるとの指摘がありました。
  2. 許可の更新制度の導入
    • これにより、コンプライアンスを欠く事業者や、適正な事業運営ができない事業者の淘汰が進む可能性があります。
    • 優良事業者にとっては、市場の健全化適正な競争環境が整うことにつながります。
  3. 委託次数の制限
    • 多重下請構造の是正が進み、中間マージンの適正化が期待されます。
    • 自社の運送サービス価値を正しく評価させ、元請け・下請け双方にとって透明性の高い取引が促進されます。
  4. 違法な「白トラ」に係る荷主等の取締り強化
    • 不正行為に対する荷主側の責任も問われることで、遵法精神のある運送会社が報われる環境が整備されます。

全ト協は、これら適正化二法が「実効性をもって機能するため業界の叡智と総力を結集」するとの決議を採択しており、業界が一丸となって新法を活かす強い姿勢が示されました。

経営の安定に直結する政治的な要望事項

寺岡会長からの挨拶や大会決議では、運送会社の経営安定に直接関わる、政府・与党への要望事項も再確認されました。

  • 軽油引取税の暫定税率の廃止実現
    • 燃料費高騰が続く中、経営コストの大きな負担となっている暫定税率の廃止は、運送会社の収益改善に直結します。この要望が、自民党の新総裁からも言及されたという点が、大きな期待を集めました。
  • 運輸事業振興助成交付金の継続
    • 事業者の安全対策や環境対策などへの支援を支える交付金の維持・継続は、今後の投資を計画する上でも極めて重要です。

まとめ:変革の波に乗るために

第30回全国トラック運送事業者大会は、「トラック適正化二法」の成立がもたらすであろう業界の構造改革を現実のものとするための具体的な指針と、それに対する業界の強い決意が示された場でした。

運送会社の皆様は、この法制度を「やらされるもの」として受け止めるのではなく、「業界発展へのチャンス」と捉えるべきではないでしょうか。

貴社が今すぐ取るべき行動:

  1. 適正原価の正確な把握:自社のコスト構造を再確認し、「この運賃以下では運行できない」という明確な基準を設定する。
  2. コンプライアンス体制の再点検:新法に備え、許可要件や運行管理体制を強化し、優良事業者としての地位を確固たるものにする。
  3. 業界動向への継続的な注視:全ト協や県ト協が発信する情報を通じて、二法の具体的な制度設計や運用状況を常にチェックし、経営に反映させる。

業界の景色が一変する日は近いかもしれません。この変革期を乗りこなし、持続可能な成長を実現するために、大会で示された方向性をしっかりと事業運営に活かしていきましょう。